気まぐれコラム

乱筆拙筆が個性?

「字が下手なのも個性」だと、少し前にどこかのミュージシャンが発言していた。ちょっと耳を疑った。

他人から良く見えたい、と思う人であれば、身長・体型・髪型・肌の艶・総合的ルックスを高める研究や努力をしていると思う。

太り放題で髭や髪に何もケアをしない洗濯もしないって人が「字が汚いのも個性」だと言うのなら、「人から見られるところには手を一切かけない」というポリシーとしてそれも個性だと言える可能性はある。

だが、およそ人前に出るのが主たる仕事の芸能人が言ったとしたら、矛盾はないだろうか。

字も同様に人に見られる可能性のあるもの。汚い字はその人の印象を下げ、時に品位や知性も疑われかねない。

特にアジア人においては字は文化である。美しい字を見てはっとさせられる感性がある。

というわけで、私は決して字は上手いわけではないのだが、私に言わせれば「字が下手なのは個性」なんて、余程字が上手い人が、下手な人に優越感をこめて慰める言葉か、あるいは書写的作業の努力をしてこなかった(おそらくは漢字すらもよく知らない)人の言い訳に過ぎないのではないか、と思うのである。