普段は二輪に乗っているのだが、この日は道中で信号や渋滞、踏切などで悉く止められていた。
ようやく前が空いた形で、スロットルを握りエンジンを解放させて速度が上げ進行を始めたのだが、
その数秒後、小学生5〜6年生らしき男子児童が2人、信号のない横断歩道でビシッと肘を伸ばして横断の合図を見せた。
あっと思って反射的に即減速をし停止して横断を促したわけだが、私が驚いた理由は「横断歩道で手を挙げられた」経験がほとんどなかったからである。
そのまま素通りしても問題のないタイミングだったかもだが、躊躇なく停止させるだけのオーラがそこにはあった。
横断歩道で手を挙げる、という行為が、これほど効果的なものかと初めて思い知った気分だった。
子供の頃は、指導を受けた際に「そんな手ー挙げるなんてカッコわる。どうせ運転手見てないし」みたいな反発感を持ったりしたのだが、それら全てが消し飛んだわけだ。
彼らは渡った後きちんと真っ直ぐ私に向かい頭を下げた。
自分がこの年齢でもここまではしない。負けた、という気持ちや、こんな子が今だに存在するんだ、との更なる驚きがあったが、何か爽やかな空気が体の中を流れた、そんな出来事だった。